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銀座​いち分の仕込み
​穴子

捌くのは早くないんです、と小川氏は言う。しかし穴子は面倒な魚で、丁寧に作業を行わないと美味しくなくなる。だから丁重に仕込みを行います、と続ける。話しながらも手は全く止まらない。血を残さないよう、頭と内臓と骨を綺麗に取り分けて開く。しっかりと水と酒で洗う。骨は残った僅かな血も取り除き、焼いて煮詰めの出汁にする。箸で持ち上げられないほど柔らかく煮た穴子からは骨を抜く。

​車海老

車海老は鮮度が重要である。活きたまま串を刺す。茹で上げる。皆の目の前で殻を剥く。これを鮨に握る直前に行わなければならない。提供の直前まで活海老が必要であり、市場が休みの日には出すことができなかった。市場が休みでも車海老を出したいと、水槽を用意した。水槽の管理は奥方の仕事である。苦労を重ねながら、海老を水槽で"飼育"する。塩水を調製する。ポンプで泡を送り酸素を供給する。水温の調整も難しい。可愛いんですよ、と言いながら見せてくれた水槽の底には、大きな車海老達が揺蕩っていた。

※車海老は基本、前日までのご予約にて承ります。当日予約ですとご用意ができないこともございます。予めご了承くださいませ。

仕込み

鮨に使われる魚は釣れたものを捌いて切って終わりではない。完成した鮨それ自体からは想像できないほど、さまざまな下処理が行われている。それが"仕込み"である。繊細な作業も多い。デスクライトで明るく照らされた作業場で、丁寧に、しかしてきぱきと準備が進む。​身を切り分ける。内臓や血を徹底的に除去する。鮮度を見極める。塩を振る。串を打つ。酢や昆布で締める。空気を抜き氷温で熟成させる。時には気が遠くなるほどに、細かく正確な作業が積み重なる。鮨となる魚が出来上がっていく。

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